あらゆる人と、metapsが交わる場所

Imagination is more important than Knowledge

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Chammika Mannakkara / チャミカ・マナカラ
株式会社メタップスワン

スリランカ出身。スリランカにて大学卒業後、バックエンドエンジニアとして活躍。その後、スウェーデン王立工科大学で学びを深め、国立情報学研究所の博士課程に進学するために来日。同研究所の研究者として勤務。2013年、ビカム株式会社(現株式会社メタップスワン)に入社。現在は、autoSEMおよび新規プロダクトのmielにおいてリードエンジニアとして活躍中。

 

自分の試行錯誤を、現実世界の課題解決に活かしたい。

 

ー現在の業務を教えてください。

autoSEMとmielというプロダクトをリードエンジニアとして担当しています。autoSEMは我々が独自開発したアルゴリズムにより、リスティング広告の入札管理を自動で行うツールです。mielはインスタグラマーの投稿画像や自分が撮影した写真をもとに、AIが様々なECサイトから類似商品を提案し、購入までできるアプリです。こちらはまだβ版なので、2020年の正式リリースに向けて開発を進めています。

 

ー入社当時は何を担当されていたんでしょうか?

今お話したautoSEMのプロジェクトの立ち上げをバックエンドエンジニアとして担当していました。このツールのための収益見積モデルを開発することから始まりました。当時はシリコンバレーで経験を積んだアメリカ人マネジャーと共に担当していましたが、徐々に私がオーナーシップを持つようになり、今は目標設定から進捗管理まで全てをマネジメントしています。

 

ーそしてmielを立ち上げることになると。

そうですね。そもそもビカムは商品検索サイトを運営していて、テキストだけではなく画像で検索したいという顧客ニーズが多くありました。そこで、ネットに溢れるファッションアイテム画像とECサイトを機械学習でマッチングさせるという構想に至りました。

 

ー世代によってはInstagramで画像検索することの方が多くなってますからね。

仰る通りです。でも今までは、画像検索で気に入った服や商品を見つけることができても、そこからすぐに購入することができなかったんです。Instagramのショッピング機能などが対応し始めていますが、ECサイト側は毎回自分たちで画像にタグをつけてデータをアップロードする必要がある。この膨大な作業を自動化するのが、AIファッションマッチングアプリのmielです。

 

 

ーなるほど。そもそもAIに興味があってビカムに入ったんでしょうか?

いえ、当時私はバックエンドエンジニアでした。もともと日本の博士課程でソフトウェア工学を学んだあと、そのまま研究者として日本で働いていました。研究者という職業は知的好奇心を探求できて本当に面白かったのですが、もっと本当の意味でのチャレンジをしたかった。そして多国籍な人々が働く環境で働きたかった。その点でマッチしたのがビカムでした。当時のモチベーションはAIではありませんでした。

 

ー本当の意味でのチャレンジとは何ですか?

自分の試行錯誤が机上の空論ではなく、現実世界における課題解決に繋がるチャレンジですね。研究者時代は時間軸がロングスパンというのもありますが、少しそこに物足りなさを感じていました。

 

ーなるほど。

多国籍という意味でもビカムほどインターナショナルかつ自分のスキルと合う会社はありませんでした。スピンアウト前の当時、ビカム本社はアメリカでドイツやフランスにも支社があり、日本はその中で最も大きい市場を持つ支社でした。一緒に働くエンジニアは全員国籍が違いました。そして私のバックエンドエンジニアとしてのスキルも求められていたので、タイミングが良かったです。

 

ー今でもビカムは外国籍のエンジニアしかいませんからね。

はい。基本的に全員が英語で会話しているので国籍は関係ありません。

 

ー入社前に思い描いていたチャレンジはできていると思いますか?

はい、関係する全てのプロジェクトがチャレンジだと思っています。

 

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自分が望めば何でも学べる。 誰もその好奇心を止めることはできない。

 

ー特にチャレンジングなプロジェクトを一つ挙げるとするとなんでしょう?

難しいですが、直近で担当しているmielですね。先ほどお伝えした通り、私は元々AIの専門家ではありません。ここ最近のAI産業は基幹技術の発展や新しい手法の開発がめまぐるしく、スピードについていくのも大変です。また、新規事業なので無数のAIモデルや手法からベストな方法を見つけだすことが必要です。加えて、コンシューマー向けのアプリ開発もやったことがなかったので、全てが初めてという状況でした。

 

ー失敗も結構多かったのでしょうか?

失敗ではなくラフタイムと私は捉えているのですが...そうですね、多かったです。そもそもAIの話でいうと、初めは画像検索ではなく、強化学習を用いてautoSEMプロジェクトを最適化するプロジェクトを始動していました。そのために色々勉強してプロトタイプを作っていましたが、結果的に完全に最適化するほどのデータがなくてプロジェクトは中止。しかし、そのプロジェクトにおいて強化学習モデルだけでなく、様々なAIモデルに触れることができたんです。それを利用して、画像検索モデルの開発にとりかかりました。それが今のmielです。

 

ー専門外へのチャレンジはラフタイムが多そうですね。どうやって勉強していたのでしょうか?

そうですね、仕事の合間をぬってオンラインコースを受講したり、論文や専門書、テックカンファレンス資料を読み込んでいました。わからないことがあれば著者に直接連絡して教えてもらったこともありますし、自分の中では相当勉強してきたつもりです。もちろん、今でもそれを継続しています。

未出版の最新本が読めるSafari Books Onlineはおすすめですよ。特にAI技術では、しっかりとした内容の本として出版された頃には、その技術はもうひと昔前のものである可能性もありますからね。あとモデリングにはTensorFlowやPyTorch、AWSのMXNnetを使っていました。

このご時世、本気で学ぼうと思えばネットで最新の知識を得ることができます。特にAIコミュニティは、知識の共有に積極的です。例えば、強化学習についてはOpenAI、研究論文を読みたいならばOpenAccessで、さらにGoogle Colaboratoryでは無料でGPU環境が使えますから本当に恵まれていると思います。やるかやらないかは自分次第です。

 

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ー入社から既に約7年。ここまで頑張れるモチベーションの源泉は何でしょうか?

働いている人や仕事が好き、柔軟な働き方や居心地の良さはもちろんあるとして、純粋に新しい知識を吸収することが好きだからだと思います。「学ばないといけないことが山ほどある」、「あれもこれも頭に入れないといけない」という状態にテンションが上がるんです。まるで子供のように。

 

ー特に最新技術はワクワクするのかもしれないですね。

はい、「これらの技術を組み合わせれば何ができるんだろうか」と興奮します。最近だとブロックチェーンについても色々と学んでいて、0xプロトコルなどは何か活用できるのではと考えているところです。これは大きなモチベーションだと思いますね。先ほども言いましたけど、今の時代、自分が望めば何でも学べます。誰もそれを止めることはできません。

 

ーモチベーションの源泉は「好奇心」ということですね。

そうですね。AIに限らず毎日何か新しいことを学ぶというのは習慣にしています。例えば、Wikipediaが好きなので、暇な時はランダムにスクロールして気になったページを読み込んだりします。

あともう一つ、そもそもモチベーションが下がりにくいというのもあるような気がします。研究者時代から、良い案が出るまで愚直に可能性のある方法を片っ端からトライし続けることには慣れているので。

 

ーなるほど、研究者としての経験も活きていると。他にも何かありますか?

そうですね、膨大な周辺情報をインプットすることで課題の本質を見極めること、そしてその課題の解決方法を見つけ出すことでしょうか。非常に基本的なことですが、インプットする情報量と考え出す可能性あるソリューションの数は他の人と比べても多いと思います。

 

自分が信じる「正解」が、 相手にとっても「正解」とは限らない。

 

ー今はリードエンジニアとしても活躍されていますが、マネジメントについてはどうですか?

難しいですね。前任のマネージャーから良い部分を盗みながら、2年近く自分なりにトライアンドエラーを繰り返してここまで来ていますが、正直マネジメントについて語れるほどのレベルではないと思っています。私ではなくチームのみんなに聞いて頂きたいですね。そもそも彼らが優秀だからこそチームが成り立っていると思っているので。

 

ー例えば何か気をつけている点などはありますでしょうか?

強いて言えば、「マイクロマネジメント」は絶対にしないと決めています。ゴールは設定しますが、そこまでどうやって辿り着くかはメンバーに全て任せています。彼らが無駄な緊張感や縛りなく、リラックスして自分なりの働きをしてくれた結果、良いプロダクトが作れれば最高だなと。

 

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ー素晴らしいですね。そのような個々人の意思を尊重する考えは前から持っているのでしょうか?

強く意識し出したのは来日後、私が育ったスリランカの当たり前と日本での当たり前が全く違うと実感した時からですね。例えば宗教。スリランカではほとんどの人が仏教ですが、日本では全く状況が違う。車の通行レーンや本の文字もスリランカとは逆です。一番衝撃的だったのは地図です。

 

ー地図ですか?

日本に住んで少し経った時、世界地図を見ることがあったんです。最初は本気で地図が間違っていると思っていました。なぜならスリランカで見ていた世界地図は、スリランカが中心に描かれていたので。

 

ー確かに、日本の世界地図は日本が中心に描かれていますね。

はい、その時に思ったんです、みんな自分の信念や考え方を中心に世界を見ているけど、その中心は実は人によってバラバラだと。今まで自分が正解だと思っていたことが、必ずしも相手にとっての正解ではないと強く意識するようになりました。

 

ー「違い」を意識するようになったんですね。

はい、違いを理解しようと努力すること、そしてそれを尊重することはマネジメントに限らず心掛けています。純粋にその違いに対して興味があるというのもありますが。例えば、あえて異なる人種の人と話して「違い」を体感する、そして共通点を発掘するということを意識的に行っています。

 

ー素敵ですね。それでは最後に、チャミカさんが仕事で最も大切にしていることを教えて下さい。

子供の時から好きなアインシュタインの言葉があります。

“Imagination is more important than knowledge”(想像は知識に勝る)

私の解釈では、想像は知識のドライバーであるということ。人間は自分の頭で考え、何かをイメージする時、初めて知識が生成される。世界は優秀な人であふれているのだから、多くの人から教えを乞うことやたくさんの本を読むことはもちろん大切です。ただ自分自身がOriginal Thinkerであることはもっと重要だということ。自分の頭で想像することを忘れてはいけないということです。

だからこれからも想像を止めず、自分の好奇心に従って新たな知識を吸収し続けます。これが一番大切にしていることです。

 

ーチャミカさん、本日はありがとうございました。

 

取材:meetaps編集部
撮影:織井 浩