たとえ地味な仕事に見えても、自分次第で"使命"に昇華できる。

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堤 亮介 / Ryosuke Tsutsumi

立教大学卒業後、みずほ情報総研に入社。地銀や信託銀行などの金融機関を顧客とした開発案件や社内のインフラ構築案件に従事。2019年メタップスに参画し、情報システムの構築や情報セキュリティの向上に従事。

 

原動力は危機感と反骨精神

 

ーもともとエンジニアになりたくて、前職のみずほ情報総研に入社されたんでしょうか?

いえ、実は新卒で就職活動していた時は全くそんなことは考えていませんでした。いろいろな業界を受ける中で手に職をつけるという意味でいうと良いなとは思っていましたが。そもそも私は大学でも文系出身ですし、学生の時からプログラミングをしていた訳ではなかったんです。

 

ーということは、社会人になってからプログラミングを学ばれたんですね。

はい。最初の6年ほどは仕事を通じてプログラミングや業務知識を学びながら、SIerの開発組織で既存システムの保守・運用をしながら小さな案件のプロジェクトリーダーのような仕事を担当していました。SIの上流工程なので、コードを書くというよりは案件の立案や要件定義・設計、ベンダーコントロールを含む全体の進捗管理が仕事のメインでした。他にも大手の既存顧客向けの課題ヒアリングや大規模システムの機能改修提案営業も行っていました。

 

ーそこからインフラエンジニアに転向されたんですか?

はい、会社としてもジョブローテーションの文化はあったので、そのタイミングで自分で希望を出してインフラ構築を専門とする部署に異動しました。

 

ーそれはなぜですか?

それまでの業務では、守備範囲が広い分、全てが中途半端だと感じていたからです。もっと専門性をつけて貢献したいなと。

 

ーなるほど。その中でもインフラエンジニアを選んだのはなぜですか?

自分の武器というか「強み」を探っている中で、可能性を見いだせそうな領域がインフラだと感じていたからです。例えば、マネジメントという観点ですと、自分の上司には及びません。プログラミングでは協力会社・ベンダーに優れたエンジニアの人たちがたくさんいるので彼らに任せた方が速いし確実です。でも、インフラ領域は少し違いました。当時、仮想環境を作るプロジェクトやネットワーク基盤の一部分を機能改修する要件に対し、チームの中で誰も詳しい人がいないという場面が多々ありました。それで先陣を切って自分が手を動かしながら勉強した結果、独力で案件を問題なく完了させることができました。その時の成功体験が大きかったと思います。

 

ー当時から勉強熱心だったんですね。

いえ、正直にお話しすると、最初の数年はモチベーションもプロ意識も本当に低い、ダメな社会人だったと思います。勉強も情報収集もせず、ただ会社から求められていることをこなすだけの日々でした。

 

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ー意外ですね。

友人や後輩と話をしていても、全然、自分よりすごいモダンな環境の高いレベルで仕事をしている人はたくさんいると感じていました。最新の知識をキャッチアップして自分で手を動かして実装している人たちと話すと、劣等感というか危機感が日に日に大きくなっていました。純粋に悔しかったんですよね。

 

ーいつそのスイッチが切り替わったんですか?

先ほどお伝えしたインフラ領域で自分の成功体験ができたタイミングですね。ちょうどその後すぐに異動するんですが、必死に勉強しました。もっと成長しないと、もっと専門性を身に付けて貢献しないといけないという危機感。友人や後輩に負けていられないという反骨精神。それらが私の大きな原動力でした。

 

ー最初からエンジニアだとその危機感は醸成されなかったかもしれませんね。

仰る通りですね。あとプロジェクトリードや顧客への提案・折衝を経験したインフラエンジニアというのは非常に稀有だと後々気が付きました。仕事を前に進めるためには社内コミュニケーションは必須ですし、これが苦手なエンジニアが意外と多い。また、ISMSなどの各種認証を取得していて、規定されたルールに基づいたドキュメントの作成や監査の対応をしたことも貴重な経験です。そういう意味でも、全体を上手く進めるための対人調整やコンプライアンス意識の醸成を社会人生活最初の数年間で経験できたことは大きな自分の強みだと思っています。少なくとも、そういう意味でのバランス感覚は養われたと思うので。

 

自分の強みを磨く。自分にとってそれはインフラ。

 

ー希望する組織に異動されてからはいかがでしたか?

インフラエンジニアという仕事自体が自分の興味・関心に合っていましたし、自分の武器として磨き続けたい分野なんだと改めて思いました。強みではないかと仮説を持って異動したら、それが確信に変わったという感覚に近いです。

 

ー素晴らしいジョブチェンジですね!

そうですね、幸運でした。汎用的なところも良いなと思うようになりました。最近はサーバーレスの環境やクラウドネイティブなシステムが増えてきていますが、インフラのないシステムはありませんから。必ず何かサービスを開発する時にはインフラや基盤レイヤーの知識が必要とされますし、非常に応用が効きます。

 

ー3年ほどそのまま働かれ、メタップスへの転職に踏み切ったのはなぜですか?

面白いことや楽しいこと、学ぶことがたくさんありましたが、働いているうちに価値観が変わってきたのが原因だと思います。

 

ー何に価値を置くようになったのでしょうか?

1つは新しい技術にどんどん触れるような環境で経験を積みたいということ。SIerでは顧客からの需要がなければ新しい技術を使ったサービスに携われません。もう1つは意思決定スピードの速いところでPDCAを回したいということですね。システムがほぼオンプレ環境で、新しい物理サーバを買う稟議1つの承認で1ヵ月もかかることもあり、「必要な時に必要なだけサービスを使う」というクラウド的なスピード感を経験したいと思っていました。やっぱり当時も危機感が大きかったです。社内の先輩や同期で辞める方は少なかったので。

 

ー大企業で待遇も良く、居心地が良いとなれば辞める方は非常に少ないかと思います。

仰る通りだと思います。30歳を過ぎて、決断をするなら今が最後だという覚悟を持って踏み切りました。社内ではいろいろな方から「本当にベンチャーに転職して大丈夫か?」と心配の声を何度も掛けて頂いていましたし。でも今振り返ると、最善の選択をしたと胸を張って言えます。むしろ残っている人たちに「大丈夫か?」と話をしたいほどメタップスに入社してから感覚は変わりました。後悔は0です。

 

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ー実際にメタップスに入社してみていろいろと違いはあるかと思いますが、基本的にはポジティブに受け入れられているということですね。

そうですね。大きくはSIer/事業会社、大手/ベンチャーという二つの違いがあると思うんですが、前者に関しては、SIerだと顧客主導で納期や納品物があらかじめ決まっているんですが、事業会社だとそれらを自分たちで考えて議論する中で作っていく必要がある。合う合わないはあると思いますが、私はこのプロセスを楽しめています。

 

ー後者の大手/ベンチャーという違いでいうといかがですか?

まさしく転職で私が求めていたスピード感のある環境というのが一番の違いだと思います。メタップスのサービスは基本的にアジャイルで開発してどんどん改良を加えていくスタイルですから。

 

ー逆にいうと、自分から動かないと何も進まないしルールもあまり決まっていませんよね。

そうですね、良くいうと柔軟です。笑 あとITベンチャーは、前線でプロダクト開発をするエンジニアが豊富であったり、リソースを多分にさいているケースは多いですが、一方でセキュリティやインフラ面が少々荒っぽいような会社も多いです。私は後者の経験は豊富ですから、やっぱり自分がそこに貢献できていると実感できるのが一番楽しいですね。

 

ー自分の介在価値の高さを実感できるということでよね。

はい、大企業だと同じようなスキルセットの社員が何人もいるので、これはITベンチャーに来て非常に嬉しい副産物でした。

 

仕事ではなく、使命と言えるようになりたい

 

ーいま業務の中で課題に感じていることはありますか?

大きくは3つです。1つは全社の業務効率化、もっと無駄な作業をなくしていくことです。2つ目はセキュリティ強化、全ての事業をよりセキュアにするインフラ基盤を作ること。そして3つ目はBCP(Business Continuity Planning:緊急時の事業継続計画)、災害や社会情勢の変化など、何があっても事業を継続できる仕組みを情報インフラという側面から構築することです。

 

ー特にBCPに関しては、直近でもコロナウイルスの影響を各社受けていますからね。

仰る通りです。今回はリモートワークがポイントでしたが、実は事前にテスト部署として経理の方々を対象に、セキュリティに問題がないネットワーク環境での動作を確認しておりました。

 

ーその上で全社員をリモートワークに切り替えたということですね。

はい。BCPに関しては、どれだけ事前に準備できているかで大きく事業を左右すると改めて理解できる良い経験になりました。

 

ー入社当時に予定されていた業務内容と今のポジション、結果的に変わってしまったかと思いますが、その辺はいかがですか?

未だ誰もやっていないことを遂行するポジションだったので、最初から状況が大きく変わる可能性があることは予想していました。それに、色々と変化はありますが、最新のテクノロジーを使って、先陣を切って業界のスタンダードを創りにいく仕事をさせてもらえているので、それに誇りを持っています。

 

ー他に挙げて頂いた、業務効率化とセキュリティ強化という点はいかがでしょうか?

大切なのは双方のバランスです。業務効率化を優先すればセキュリティが緩くなり、ユーザに負荷のかかるセキュリティ施策を打ち出せば、事業に関係のない無駄な作業や時間が増えてしまいます。その時々の企業フェーズや事業毎の注力ポイントを理解しながら、運用負荷の少ない仕組みを導入することで最適なバランスを整えていくのが重要だと考えています。

 

ー特にメタップスは単一事業ではありませんからね。

仰る通りです。例えば金融事業を扱うメタップスペイメントでは相当高いセキュリティレベルを求められます。一方で、新規事業で同じようなセキュリティ基盤を整えてしまうと、スピード感で他社と戦えずに事業として負けてしまう。そもそも彼らにはもっと事業のグロースに集中して欲しいですしね。

 

ーどうやってそのバランスは取っているのでしょうか?

メタップスには全社横断の開発部門があるので、彼らと相談しながら動いています。各社の状況把握や、それこそ一社のベストプラクティスを他社に応用できないか、各種システムへの認証基盤などいろいろなレイヤーに跨って改善点を議論しています。

 

ーなるほど。先ほど危機感というキーワードがありましたが、今は何がモチベーションの源泉なんでしょうか?

そうですね。今は純粋に新しいことへの好奇心が大きいと思います。以前はレガシーな開発環境でしたが、今は新しい知識や技術を取り入れられる環境がありますし。インフラエンジニアはフロントエンドやサーバーサイドと比較して、少し地味な印象があると思うんです。仕事としても、働いている人も。でも、実際は楽しいですよ。

 

ーどういう瞬間が一番楽しいですか?インフラエンジニアとして一番燃える瞬間。

アドレナリンが出るのは障害対応ですね。あれは燃えます。もちろん大前提として障害が起きないように最善を尽くしていますよ。99%はその予防に時間を使っているので。でもどうしても障害は避けられません。

 

ーまさに今回のコロナがそうですよね。

はい。そういう問題が起きた時に、問題を切り分けて優先順位をつけ、最速で事態を収束させる。少なくともベターな状態に何が何でも持っていく。問題が起きないようにする試行錯誤と、問題が起きてから解決策を練って実行する試行錯誤はモチベーションが全く異なると思っています。

 

ー面白いですね。そもそも堤さんは楽しく仕事することに重点を置いている気がします。

そうですね。楽しく仕事している人はかっこいいですから。 ちょっと話はそれますが、プリンスという歌手をご存知ですか?彼の好きなセリフがあって。バンドメンバーが「さあ、仕事するか!」って言ったときに。

「仕事と言うな。これは使命なんだ。」

って返したんですよ。難しいのはわかっているんですけど、この感覚になるのが理想だと思っています。そういう感覚で仕事している人は本当にかっこいい。

 

ー今後のキャリアにも通じると思いますが、どうすれば使命に昇華できると思いますか?

漠然とですが、キャリアの軸足をインフラに置きながらも、会社組織のバックオフィス全体をどう支えにいくかという大きな視野に立った時かなと考えています。実は、メタップスというベンチャー企業で人事総務部という組織で仕事をする中で、新たにすごく興味を持つことが出てきたんです。

 

ーそれはなんですか?

「組織」です。前職とは違い、経営陣の顔が見え、企業の意識決定の現場に近い環境に身を置けるようになったことで、これまで自分とは無関係に思えたことからも課題や気付きを得ることが増えてきました。ここにヒントがあるような気がしています。

 

ーつまり、インフラエンジニアという枠から出て、会社組織を支える存在になった時ということですね。

はい、それが使命に昇華できる時なんだと思います。まずはそこですね。さらには組織の枠も越えて「テクノロジーでお金と経済のあり方を変える」というビジョンを持つ会社を通じて、私が自分の意思で実現する。そこまでやって初めて昇華なのかもしれません。でも大切なのは楽しむことなので、あまり肩肘張らず、自分のペースで歩み続けられればと思います。

 

ー堤さん、本日はありがとうございました!

 

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取材・撮影:meetaps編集部